「マイ・リトル・ボート」は、ブラジルのギタリスト・作曲家ロベルト・メネスカルが1961年に作曲したボサノヴァの名曲である。原題は「O Barquinho」(小さな船)。メネスカルはボサノヴァの創成期を支えた重要人物の一人で、カルロス・リラらとともにこのジャンルの発展に貢献した。
32小節のフォームを持つこの曲の最大の特徴は、半音ずつ下降するメジャー7thコードの連なりである。中間ドミナントを挟みながらクロマティックに動くこの進行は、ポピュラー音楽では珍しく、トライトーン・サブスティテューションの原理に基づいている。キーはGメジャーが一般的で、6小節目でドミナント(D7)に到達した後、IIIm(Bm)への迂回を経てトニックに戻る構造がユニークだ。軽快なボサノヴァのリズムに乗せた浮遊感のあるメロディが、海の上を漂う小舟のイメージを見事に描き出している。
ジャズにおける代表的な録音としては、ブラジルの歌姫ナラ・レオンがメネスカル自身のギター伴奏で歌ったバージョンが名高い。英語歌詞版ではペギー・リーが1963年に録音したものが広く知られている。