「ジョイ・スプリング」は、クリフォード・ブラウンが1954年に作曲したハード・バップの代表的なスタンダード。タイトルは妻ラルーへの愛称「ジョイ・スプリング(喜びの泉)」に由来する。ブラウンは1956年に自動車事故で25歳の若さで亡くなったが、その短い生涯で数多くの名曲と名演を遺した。
AABA形式で、Fメジャーを基調としながらも各セクションで異なるキー・センターを経由する点が大きな特徴。A1セクションはFメジャー、A2はGbメジャーへ半音上行し、Bセクションではさらにキーが移動する。この多調的な構成がメロディに弾むような推進力と色彩の変化を与えている。テンポはミディアム・スウィングが標準的で、ブラウンらしい明るく歌心に満ちたメロディが全編にわたって輝いている。
クリフォード・ブラウンとマックス・ローチ・クインテットによる1954年8月の録音が原点にして頂点。ハロルド・ランドのテナーサックスとリッチー・パウエルのピアノを擁する黄金のクインテットの演奏は、ハード・バップの金字塔である。マンハッタン・トランスファーは1985年のアルバムVocaleseでヴォーカリーズ・ヴァージョンを録音している。