「ダンシング・オン・ザ・シーリング」は、リチャード・ロジャースが作曲、ロレンツ・ハートが作詞した1930年のスタンダードである。もともとミュージカル『シンプル・サイモン』のために書かれたが開幕前にカットされ、ロンドンのミュージカル『エヴァー・グリーン』でジェシー・マシューズの歌唱により初演された。
形式は32小節AABA。ロジャースの旋律はロマンティックかつ上品な雰囲気を持ち、Aセクションでは優しく揺れるような動きのメロディが印象的だ。ハートの詞は「天井で踊る恋人」という幻想的なイメージを描いているが、「ベッドの下の恋人」という含意が当時のイギリスとアメリカの検閲官によって問題視され、ラジオ放送が禁止されたという逸話も残っている。バラードとして演奏されることが多く、穏やかなテンポの中で繊細な和声の移ろいが楽しめる。
1934年の映画版『エヴァーグリーン』で再びマシューズが歌い、広く知られるようになった。ジャズの分野ではフランク・シナトラが1955年のアルバムIn the Wee Small Hoursで深みのあるバラード解釈を披露したほか、エラ・フィッツジェラルドやチェット・ベイカーもこの曲を取り上げ、ロジャース&ハート作品集の中でも愛される一曲となっている。