「Chega de Saudade」は、アントニオ・カルロス・ジョビンが作曲し、ヴィニシウス・ヂ・モライスが作詞したボサノヴァの記念碑的楽曲である。1958年にジョアン・ジルベルトがシングルとしてリリースし、ボサノヴァというジャンルを確立した歴史的一曲とされる。英語圏では「No More Blues」の別名でも知られる。
68小節に及ぶ長大な形式を持ち、前半はDマイナー、後半は同主調のDメジャーへ転じるという二部構成が大きな特徴である。このマイナーからメジャーへの劇的な転換は、「サウダージ(郷愁・切望)よ、もう終わりにしよう」という歌詞の心理的変化を音楽的に体現している。ジョビン特有の精緻なハーモニーとシンコペーションを伴うリズムがブラジル音楽とジャズの架け橋となり、世界中のミュージシャンに影響を与え続けている。
1958年のジョアン・ジルベルトによるシングル盤(Odeon)がボサノヴァ史上最初のヒットとなり、2000年にグラミー殿堂入りを果たした。スタン・ゲッツやディジー・ガレスピーをはじめ、多くのジャズ・アーティストもカヴァーしている。