「Cheek to Cheek」は、アーヴィング・バーリンが1935年の映画『トップ・ハット』のために書き下ろした楽曲で、劇中フレッド・アステアがジンジャー・ロジャースと踊りながら歌った。同年のヒットパレードで11週連続1位を記録し、1935年最大のヒット曲となった。
キーはCメジャーで、通常の32小節AABA形式とは異なる72小節という拡張構成(AA-BB-C-A)をとる珍しいスタンダードである。Cセクションでは一時的に同主短調へ転じ、陰影を加えた後、明るいAセクションへ回帰する。ダンスのための楽曲として書かれただけに、フォックストロットのリズムにシンコペーションが加わり、軽やかなスウィング感が全編を貫く。長大な形式ながらハーモニーは比較的シンプルで、演奏者に豊かな表現の余地を与える。
フレッド・アステアのレオ・リースマン楽団との1935年のオリジナル録音はグラミー殿堂入りを果たしている。ジャズではエラ・フィッツジェラルドとルイ・アームストロングのデュエット盤Ella and Louis(Verve, 1956)での共演が決定的名演として知られる。