「But Not for Me」は、ジョージ・ガーシュウィンが作曲、兄アイラ・ガーシュウィンが作詞し、1930年のブロードウェイ・ミュージカルGirl Crazyのために書かれた楽曲である。初演ではジンジャー・ロジャースが歌った。
キーはE♭メジャー、32小節のABAB'形式。一般的なAABA形式と異なるこの構成が新鮮で、特に2つ目のBセクション(B')ではメロディが最初のBよりもさらに高い音に跳躍してから下降するという巧みな工夫がなされている。コード進行はガーシュウィンらしい洗練されたもので、スウィングからバラード、ラテン調まで多様なテンポ・スタイルで演奏可能。「恋の歌はあるけれど、私のためじゃない」という自嘲的な歌詞と明るいメロディのコントラストも魅力的である。
ジャズの名盤として、アーマッド・ジャマルのライヴ・アルバムAt the Pershing: But Not for Me(1958)が特に有名。また、チェット・ベイカーのヴァージョンや、エラ・フィッツジェラルドのElla Fitzgerald Sings the George and Ira Gershwin Songbook(1959)収録版も広く知られる。