「Waltz for Debby」は、ジャズ・ピアニストビル・エヴァンスが当時3歳だった姪のデビーに捧げて書いた楽曲で、1956年のデビュー・アルバムNew Jazz Conceptionsにソロ・ピアノ版として初録音された。エヴァンスの最も有名な作品である。
キーはE♭メジャー、3/4拍子のワルツ。一見シンプルに聞こえるリリカルなメロディの裏に、メジャー7th、マイナー7th、ハーフ・ディミニッシュなど密度の高いコード進行が隠されている。印象派音楽の影響を感じさせる色彩豊かなハーモニーと、内省的でありながら温かみのある雰囲気がこの曲の最大の魅力だ。演奏においてはトリオ・メンバー間の対等なインタープレイが鍵となり、ベースがメロディックな対旋律を奏で、ドラムスがダイナミクスを繊細にコントロールする。
決定的な録音は1961年6月25日にヴィレッジ・ヴァンガードでライヴ収録されたアルバムWaltz for Debbyで、スコット・ラファロ(ベース)とポール・モチアン(ドラムス)との伝説的トリオによる演奏である。ラファロはこの録音のわずか10日後に交通事故で他界し、これが最後のスタジオ/ライヴ録音となった。