「Walkin'」は、1954年にマイルス・デイヴィスの録音によって広く知られるようになったブルース・ナンバーである。著作権上の作曲者はリチャード・カーペンターとされているが、カーペンター自身は演奏家ではなくアーティスト・マネージャーであり、実際の作曲者についてはジーン・アモンズやジミー・マンディの名が挙げられている。
キーはFメジャー、12小節のブルース形式。シンプルなブルース・フォームでありながら、テーマのメロディは力強く印象的で、ハード・バップの幕開けを告げるアンセムとなった。テンポは中程度で、各ソロイストが十分にストーリーを展開できる余裕を持った構成だ。ブルース・スケール、ペンタトニック、ミクソリディアンなど多彩なスケールを駆使したアドリブが楽しめ、セッション曲としても広く親しまれている。
決定的な録音は1954年のPrestige盤Walkin'で、J.J.ジョンソン(トロンボーン)、ラッキー・トンプソン(テナーサックス)、ホレス・シルヴァー(ピアノ)、パーシー・ヒース(ベース)、ケニー・クラーク(ドラムス)という豪華セクステットによる演奏である。約13分に及ぶ長大なブルース・セッションは、ハード・バップ誕生の瞬間を記録した歴史的名演だ。