「Them There Eyes」は、1930年にマセオ・ピンカードが作曲したジャズ・スタンダードである。作詞はウィリアム・トレイシーとドリス・トーバー。初期の録音にはルイ・アームストロング(1931年)があるが、この曲を決定的に有名にしたのはビリー・ホリデイの1939年録音である。
楽曲は32小節で、おおむねABAC的な構成をとる。キーはFが標準的。コード進行はトニック、サブドミナント、ドミナントを中心としたシンプルな構造だが、各コードに7thや6thが付加され、スウィング期らしい華やかな響きを持つ。アップテンポで演奏されることが多く、軽快なリズムと明るいメロディがセッションの定番曲として人気を集めている。ジプシー・ジャズのレパートリーとしても広く親しまれ、ジャンゴ・ラインハルトとステファン・グラッペリも録音を残している。
最も有名な録音はビリー・ホリデイの1939年Vocalion盤で、レスター・ヤングらとの共演が聴きどころ。エラ・フィッツジェラルドは1963年のアルバムElla and Basie!でカウント・ベイシー楽団とスウィング感あふれる名演を残している。