「Thanks for the Memory」は、1938年にラルフ・レインジャーが作曲し、映画The Big Broadcast of 1938のために書かれたバラードである。劇中でボブ・ホープとシャーリー・ロスがデュエットし、同年のアカデミー歌曲賞を受賞。以後ホープの生涯にわたるテーマソングとなった。
楽曲は32小節のAABA形式で、キーはFが一般的。メロディはまるで会話のような自然なフレージングが特徴で、優雅なラインの中に繊細なハーモニーの動きが織り込まれている。コード進行にはii-V-Iの連鎖やクロマティックな経過和音が含まれ、バラード解釈においてとりわけ豊かな表現が可能。穏やかな曲調のなかにほろ苦いノスタルジーが漂う、バラード・インタープリターにとって格好の素材である。
代表的な録音としては、ジム・ホールのデビュー・アルバムJazz Guitar(1957年)でのギター・トリオ演奏が知られる。ヴォーカルではエラ・フィッツジェラルドがアンドレ・プレヴィン楽団との1955年録音や、1967年のアルバムWhisper Notで味わい深い歌唱を残している。