「テンダリー」は、ウォルター・グロスが作曲しジャック・ローレンスが作詞した、1946年発表のバラードである。グロスはピアニスト兼作曲家・編曲家で、ABCラジオの音楽監督も務めた人物。この曲は彼の最も有名な作品となった。
32小節のAABA形式で、キーはEbメジャーが標準的。この曲の最大の魅力は、ワルツ的な3拍子のフィーリングを持つメロディが4/4拍子の中で揺れ動く独特のリズム感にある。A セクションの冒頭はbVImaj7やbVII7といったモーダル・インターチェンジ系のコードで始まり、半音階的な下降を経てトニックへ解決する進行が美しい浮遊感を生む。ブリッジではiv度マイナーへの動きがあり、全体を通じて甘美でありながら知的な和声構造を持つ。バラードとして演奏されることが多いが、ミディアム・テンポにも対応する。
サラ・ヴォーンの1947年の録音がこの曲をヒットに導き、以降彼女のシグネチャー・ソングとなった。ローズマリー・クルーニーの1952年のヒット版も広く知られる。インストゥルメンタルではチェット・ベイカーのトランペット版やビル・エヴァンスのピアノ・トリオ版が定番として愛されている。