「Smoke Gets in Your Eyes」は、ジェローム・カーンが作曲し、オットー・ハーバックが作詞したショー・チューンで、1933年のミュージカルRobertaで初演された。ブロードウェイ初日にタマラ・ドラシンが歌い、たちまちヒット曲となった。
形式はAABA・32小節、代表的なキーはE♭。Aセクションはゆったりとした長音符のメロディがI-vi-ii-V系の和声の上を漂い、優美で気品ある雰囲気を作る。最大の特徴はブリッジで、E♭からB(=C♭)メジャーへ半音下の遠隔調に大胆に転調する。この意外性のある和声展開がドラマティックな緊張と解放をもたらし、カーンの作曲技法の精華ともいえる。元はタップダンス用に書かれた旋律がミュージカル・バラードへ、さらにジャズ・スタンダードへと姿を変えた稀有な経緯を持つ。
ジャズの録音ではアート・テイタムの1930年代からのレパートリーとして知られるほか、セロニアス・モンクのユニークな解釈も名高い。ザ・プラターズによる1958年のR&Bカヴァーは全米1位に輝き、この曲の大衆的人気を決定づけた。