「Rockin' Chair」は、1929年にホーギー・カーマイケルが作詞・作曲したスタンダード・ナンバーである。カーマイケルは「Stardust」「Georgia on My Mind」などで知られるアメリカン・ソングの巨匠であり、本作は年老いた父と息子のコール・アンド・レスポンスによる対話形式が特徴的な一曲である。
形式はA-B-C-A1という独特の構成で、通常のAABAフォームとは異なり、Bセクションの後に新たなCセクションが現れてからA1に戻る。キーはD(またはE♭)。コード進行にはクロマティックな動きや転調が含まれ、一見素朴に聞こえるメロディの背後に意外なハーモニーの奥行きがある。ゆるやかなテンポとブルージーな語り口が、歌詞の持つ哀愁とユーモアを引き立てている。
最も有名な録音は、1929年のルイ・アームストロングとカーマイケル自身による共演盤(Okeh)である。以後アームストロングはトロンボーン奏者ジャック・ティーガーデンとのデュオでこの曲を生涯にわたって演奏し続けた。ミルドレッド・ベイリーは本作をテーマ曲として愛用し、「ロッキン・チェアー・レディ」の愛称で呼ばれた。