「Peace」は、1959年にホレス・シルヴァーが作曲した美しいバラードである。シルヴァーはハード・バップの旗手として「Song for My Father」「Sister Sadie」「Nica's Dream」など多くの名曲を生み出したピアニスト兼作曲家。本曲について彼は「ピアノの前で何気なく弾いていたら、天使が美しいメロディとハーモニーを授けてくれたような感覚だった」と語っている。
通常のファンキーなシルヴァー作品とは対照的に、テンポは約48BPMという非常にゆったりとしたバラード。形式は10小節という珍しい構成で、ビル・エヴァンスとマイルス・デイヴィスの「Blue in Green」を思わせる。ハーモニーはii-V進行を連ねてさまざまなキーセンターを経由しながら、最終的にB♭メジャーのトニックへ穏やかに解決していく。派手な仕掛けのない、静謐な美しさが際立つ楽曲だ。
初録音はホレス・シルヴァー・クインテットのアルバムBlowin' the Blues Away(1959年、Blue Note)に収められており、ブルー・ミッチェル(トランペット)とジュニア・クック(テナー)が参加している。近年ではノラ・ジョーンズのDay Breaks(2016年)でのヴォーカル版も話題を呼んだ。