「Nuages」(ヌアージュ、フランス語で「雲」の意)は、ベルギー出身のギタリストジャンゴ・ラインハルトが1940年にナチス占領下のパリで作曲した、ジプシー・スウィングを代表するバラードである。漂う雲のような瞑想的なメロディは、戦時下の哀愁と自由への憧憬を映し出している。
形式は32小節のAABA。初期の録音はF、後年の録音はG(ヴァイオリン向け)で演奏されることが多い。メロディは半音B-Cの上行から5度跳躍を経て半音階的に下降するモチーフを核とし、ヨーロッパ的な叙情性とジャズのハーモニーが見事に融合している。ブリッジでのCmからGへの解決は楽曲のエモーショナルなクライマックスであり、豊かなクロマティシズムが演奏者に表現の余地を与えている。
最も有名な録音はジャンゴ・ラインハルトとフランスのホットクラブ五重奏団による1940年12月13日のセッション(Swing Records)で、ユベール・ロスタンとアリックス・コンベルのツイン・クラリネットが美しい。1953年、死の直前に録音されたエレクトリック・ギターによるバージョンも感動的な名演である。