「No Moon At All」は、1947年に作曲家デイヴ・マンと作詞家レッド・エヴァンスによって書かれたジャズ・スタンダードである。月のない暗い夜のロマンスをユーモラスに描いた、チャーミングな小品だ。
形式は32小節のAABA。キーはDmが一般的で、バロック的とも評されるマイナー・キーのコード進行が独特の陰影を生んでいる。メロディは跳躍と順次進行をバランスよく組み合わせた歌いやすいラインで、ラテン・アレンジやバラードなど多様なスタイルで演奏される。ブリッジでのメジャー・キーへの転換が明暗のコントラストを際立たせる。
代表的な録音はジュリー・ロンドンのアルバムJulie Is Her Name(1955年)に収録されたバージョンで、バーニー・ケッセルのギター伴奏のみという親密な編成が魅力的。ジャズ・ヴォーカルではアニタ・オデイのアルバムAnita(1956年)での録音も名演として知られる。