「ナンシー」(正式には「Nancy (with the Laughing Face)」)は、ジミー・ヴァン・ヒューゼンが1942年頃に作曲した楽曲で、フランク・シナトラが1944年に録音して広く知られるようになった。もともとは友人の妻の誕生日に書かれた曲だが、シナトラの娘ナンシーの誕生日パーティーで名前を変えて歌われたことから、シナトラのレパートリーに定着した。
32小節の形式で、キーはE♭メジャーが標準的。美しいメロディと豊かなハーモニーが特徴で、バラードとして演奏されることが多いが、サンバやミディアム・スウィングでもアレンジされる。メロディはゆったりとした弧を描き、ヴァン・ヒューゼンらしい洗練されたコード・ワークが楽曲に上品な深みを与えている。ソリストにとっては、メロディの歌心を活かしつつハーモニックな探求ができる好素材だ。
ジャズにおける代表的な録音としては、キャノンボール・アダレイとビル・エヴァンスの共演によるアルバムKnow What I Mean?(1961年)収録のバージョンが秀逸。また、ジョン・コルトレーン・カルテットのアルバムBallads(1963年)での繊細なテナー・サックスの演奏も名高い。