「マイ・シップ」は、ドイツ出身の作曲家クルト・ヴァイルが、アイラ・ガーシュウィンの作詞で1941年のブロードウェイ・ミュージカルLady in the Darkのために書いた楽曲である。劇中ではヒロインが幼少期の記憶を精神分析の中で回想する場面で歌われ、物語の核心をなす重要な楽曲だ。
32小節の形式で、キーはFメジャー。ヴァイルの音楽は甘くシンプルでありながら、時に謎めいた不穏さをたたえるという二面性を持つ。メロディはゆったりと弧を描きながら展開し、ヨーロッパのクラシック音楽の素養とアメリカン・ソングの親しみやすさが見事に融合している。ハーモニーは巧みな半音進行と転調を含み、バラードとして演奏される際には奥深い情感を引き出す。ジャズ・ミュージシャンにとっては、メロディの美しさを活かしながらハーモニック・サブスティテューションを探求できる魅力的な素材である。
ジャズにおける最も重要な録音は、マイルス・デイヴィスとギル・エヴァンスの共作アルバムMiles Ahead(1957年)に収められたオーケストラ版で、フリューゲルホルンの叙情的なサウンドとエヴァンスの精緻なアレンジが一体となった傑作である。2003年にはハービー・ハンコックがグラミー賞最優秀ジャズ・インストゥルメンタル・ソロ賞をこの曲の演奏で受賞している。