「マイ・ファニー・バレンタイン」は、1937年にリチャード・ロジャースが作曲し、ロレンツ・ハートが作詞したバラードで、ブロードウェイ・ミュージカル『ベイブズ・イン・アームズ』のために書かれた。恋人の欠点さえも愛おしいと歌う歌詞は、ハートならではのウィットと切なさが同居する名篇である。
キーはCマイナー(関係調E♭メジャー)で、36小節の変則的な構成をとる。Aセクションのメロディは短調のスケールをほぼ順次進行で下降する非常にシンプルなラインだが、そのシンプルさゆえに演奏者の解釈力が問われる。ハーモニーはマイナー・キーの中で半音階的に下降するベースラインが美しく、クロマティック・ムーヴメントが曲全体にほの暗い陰影を与えている。ブリッジではメジャーへと転じ、感情的なクライマックスを築く。ジャズ・ミュージシャンに最も愛されるバラードのひとつだ。
チェット・ベイカーのウィスパー・ヴォイスによる歌唱が最も有名な録音のひとつで、彼の代名詞的レパートリーとなった。マイルス・デイヴィスは1964年のライヴ・アルバムMy Funny Valentine(リンカーン・センター公演)でトランペットによる名演を残している。フランク・シナトラ、エラ・フィッツジェラルド、ジェリー・マリガンらによる多様な解釈も広く親しまれている。