「マイ・フェバレイト・シングス」は、リチャード・ロジャースが作曲し、オスカー・ハマースタインIIが作詞したミュージカル・ナンバーで、1959年のブロードウェイ作品『サウンド・オブ・ミュージック』のために書かれた。翌1965年の映画版ではジュリー・アンドリュースが歌い、世界的に親しまれるメロディとなった。
3/4拍子のワルツで、キーはEマイナーとEメジャーの間を行き来する構成が特徴的だ。Aセクションではマイナー・キーのメロディが「雨粒」「バラ」「子猫」といった好きなものを列挙し、ブリッジでメジャーに転じて明るく開放的な気分を表現する。ジョン・コルトレーンはこのワルツ構造とモーダルな可能性に着目し、1961年のアルバムMy Favorite Thingsでソプラノ・サックスによる革命的な解釈を披露した。ドローン的なペダル・ポイントの上でモーダルに展開する彼のアプローチは、原曲の姿を大きく変え、ジャズ史に新たな地平を切り開いた。
コルトレーンの1961年Atlantic盤が決定的な録音であり、マッコイ・タイナー(ピアノ)、スティーヴ・デイヴィス(ベース)、エルヴィン・ジョーンズ(ドラムス)が参加している。この録音はコルトレーンの初期のベストセラーとなり、以後彼のライヴの定番レパートリーとなった。オリジナル・キャストのメアリー・マーティンによる1959年のブロードウェイ録音も不朽の名演である。