「ムーン・リバー」は、1961年に作曲家ヘンリー・マンシーニが映画『ティファニーで朝食を』のために書いた楽曲で、ジョニー・マーサーが歌詞を手がけた。劇中でオードリー・ヘプバーンが窓辺でギターを弾きながら歌うシーンは映画史に残る名場面であり、アカデミー賞最優秀楽曲賞を受賞した。
3/4拍子のワルツで書かれており、形式はABACの構成をとる。キーはCメジャーが一般的だが、ヴォーカリストのキーに合わせてさまざまな調で演奏される。マンシーニはヘプバーンの限られた声域に合わせて1オクターブ強の音域でメロディを書いたが、そのシンプルさが逆にこの曲の普遍的な美しさを生んでいる。ハーモニーはダイアトニックを基調としつつ、セカンダリー・ドミナントやモーダル・インターチェンジが要所で彩りを加え、ノスタルジックで温かみのある響きを作り出している。
ヘプバーンの映画での歌唱がオリジナルだが、ジャズの世界ではアンディ・ウィリアムスのヴォーカル版が最も広く知られており、彼のシグネチャー・ソングとなった。サラ・ヴォーン、ルイ・アームストロング、フランク・シナトラなど数多くのアーティストがカヴァーしている。ギタリストビル・フリゼールによるインストゥルメンタル解釈も評価が高い。