「マック・ザ・ナイフ」は、1928年にドイツの作曲家クルト・ヴァイルが音楽劇三文オペラ(Die Dreigroschenoper)のために書いた楽曲である。原題は「Die Moritat von Mackie Messer」で、ロンドンの暗黒街を舞台にした殺人バラードの伝統を受け継ぐナンバーだ。
楽曲はきわめてシンプルな構造を持ち、基本的に同じコード進行が繰り返される16小節のストロフィック形式で、ジャズ演奏では半音ずつ転調を重ねていくアレンジが定番となっている。一般的な演奏キーはBbメジャー。メロディはほぼ全音域がオクターヴ内に収まるため歌いやすく、スウィング・フィールとの相性が抜群である。コード進行が単純なぶん、ソリストはリズムやフレージングの工夫で個性を発揮でき、繰り返しごとに高揚感を積み上げていくのが聴きどころだ。
代表的な録音としては、1955年に米国でこの曲を広めたルイ・アームストロングの名唱、そして1960年のベルリン公演をライヴ収録したエラ・フィッツジェラルドのアルバムMack the Knife: Ella in Berlinが挙げられる。エラは歌詞を忘れながらもスキャットで乗り切り、グラミー賞を獲得した伝説的パフォーマンスだ。