「ラッシュ・ライフ」は、ビリー・ストレイホーンが作詞・作曲したジャズ・バラードの最高峰のひとつで、1933年から1936年にかけて、まだ10代だった彼がピッツバーグで書き上げた。1948年にデューク・エリントン楽団のカーネギー・ホール公演で初めて公に演奏された。
楽曲はヴァースとコーラスからなるが、ヴァース(32小節)がコーラス(24小節)と不可分に結びついており、ヴァースなしでは演奏されないという極めて珍しい構造を持つ。キーはDbメジャー。半音階的な転調とモジュレーションが夢幻的な雰囲気を生み出し、和声の複雑さはジャズ・スタンダードのなかでも屈指である。メロディと歌詞が精密に融合しており、キー・チェンジが歌詞の感情の変化を的確に反映する「アート・ソング」としての完成度を備えている。
ジョン・コルトレーンとジョニー・ハートマンの1963年の共演盤John Coltrane and Johnny Hartman収録のヴァージョンが決定的名演として知られる。またナット・キング・コールの1949年の録音や、ジョー・ヘンダーソンのアルバムLush Life: The Music of Billy Strayhorn(1992年)のテナー・サックス無伴奏ソロも圧巻である。