「ラバー」は、リチャード・ロジャースが作曲し、ロレンツ・ハートが作詞した1932年の楽曲で、映画Love Me Tonight(今宵は愉し)でジャネット・マクドナルドが歌った。もともとはウィンナ・ワルツとして書かれたが、後にジャズ・ミュージシャンたちによってスウィングやバップのテンポで再解釈された。
形式は32小節AABA(48小節のバリエーションもあり)、原調はDメジャー。最大の特徴はA セクションの半音階的に下降するメロディ・ラインで、次々と予想外の音に進むスリリングな動きが聴く者を惹きつける。3拍子のワルツとして演奏されることも、4拍子のアップテンポ・スウィングに仕立てられることもあり、後者では高速のインプロヴィゼーションの土台として抜群の素材となる。和声にはクロマティックな動きが豊富で、演奏者の技量を問う曲である。
ジャズの文脈では、ペギー・リーの1952年のヴォーカル・ヴァージョン(アルバムBlack Coffee)や、ジョン・コルトレーンのテナー・サックスによるアグレッシヴな解釈、そしてエラ・フィッツジェラルドのElla Fitzgerald Sings the Rodgers and Hart Songbook(1956年)収録の華やかな演奏が代表的録音である。