「ラブ・フォー・セール」は、コール・ポーターが1930年のミュージカルThe New Yorkersのために書いた楽曲である。ポーターは作詞・作曲を一手に担う稀有な才能の持ち主で、ウィットと洗練に満ちたスタンダードを数多く残した。
楽曲はAABA形式・64小節(通常の倍の長さ)で、8小節のタグが付くことも多い。キーはB♭マイナーを基調とし、AセクションがB♭マイナーからB♭メジャーへ揺れ動くポーター特有のメジャー/マイナーの交錯が印象的。この調性の揺らぎが、歌詞の持つ皮肉で哀切なトーンと見事に呼応する。ラテン・フィールとスウィングを切り替えて演奏されることも多く、その和声的な深みからインストゥルメンタル・ジャズでも非常に人気が高い。
キャノンボール・アダレイのアルバムKnow What I Mean?(1961年、ビル・エヴァンス参加)での名演は決定的。エラ・フィッツジェラルドのCole Porter Songbook(1956年)でのヴォーカルや、デクスター・ゴードンの豪快なテナー・サックス演奏も広く知られている。