「リル・ダーリン」は、作編曲家ニール・ヘフティが1957年にカウント・ベイシー・オーケストラのために書き下ろした楽曲である。ヘフティはベイシー楽団の「ニュー・テスタメント」期を支えた最重要アレンジャーのひとりで、テレビ番組Batmanのテーマ曲の作曲でも広く知られる。
楽曲はAABA形式・32小節で、キーはB♭メジャー。ヘフティ自身はミディアム・スウィングを想定していたが、ベイシーはきわめてゆったりとしたテンポを選択し、これが楽曲の決定的なキャラクターとなった。シンプルな旋律とビッグバンドの精緻なアンサンブルが、絶妙なテンポの中でスウィングする。ギタリストフレディ・グリーンのアルペジオ・フィルがアレンジの要所に配され、洗練されたサウンドを生んでいる。「遅いテンポでスウィングする」技法のお手本とも評される。
カウント・ベイシー・オーケストラによるアルバムThe Atomic Mr. Basie(1958年)での録音が不朽の名演。ミュート・トランペット・ソロの繊細な美しさと、バンド全体のタイム感覚が見事に融合している。ランバート、ヘンドリックス&ロスによるヴォーカリーズ・ヴァージョン(1958年)も注目に値する。