「ライムハウス・ブルース」は、イギリスの作曲家フィリップ・ブラハムが1921年のウェスト・エンド・レヴューA to Zのために書いた楽曲である。ブラハムはロンドンを拠点に活動した作曲家で、本作はロンドン東部のライムハウス地区の異国情緒を音楽的に描いている。
形式はAB構成の32小節(各セクション16小節)で、キーはA♭が一般的。両セクションとも同じテーマから始まるが、異なるターンアラウンドで終わるのが構造上の特徴だ。ブルージーかつエキゾチックなメロディラインはアップテンポのスウィングに映え、とくにギターやサックスの即興素材として人気が高い。ジプシー・ジャズからビバップ、ブルーグラスに至るまで、さまざまなスタイルで取り上げられてきた幅広い汎用性を持つスタンダードである。
ジャンゴ・ラインハルトの録音はジプシー・スウィングの名演として不朽の輝きを放つ。アート・テイタムのソロ・ピアノ・ヴァージョンは圧倒的な技巧で知られ、デューク・エリントン楽団の1948年カーネギー・ホールでのライヴ録音もビッグバンド・スウィングの醍醐味を伝える好演だ。