「In the Sign of Libra」は、旧ユーゴスラビア出身のトランペット奏者・作曲家ドゥシュコ・ゴイコヴィッチが書いたオリジナル曲である。ゴイコヴィッチはメイナード・ファーガソンやウディ・ハーマンのビッグバンドで活躍した後、ヨーロッパを拠点にポスト・バップの第一人者として長いキャリアを築いた。
この曲はゆったりとしたバラードで、ゴイコヴィッチの叙情的なトランペット/フリューゲルホルンの音色が存分に活きる構成になっている。東欧的な哀愁を帯びたメロディラインとモダンなハーモニーの融合が特徴で、オープン・ホーンで奏でられる温かく物思いにふけるような旋律が印象的だ。ゴイコヴィッチの作曲には、バルカン半島の民俗音楽の要素とバップの語法が共存しており、この曲もその個性が色濃く表れている。
代表的な録音としては、1996年に東京で録音されたアルバムGood Old Daysでのカルテット版(椎名豊:ピアノ、上村信:ベース、大坂昌彦:ドラムス)と、1995年のアルバムBebop Cityでのケニー・バロン(ピアノ)、レイ・ドラモンド(ベース)、アルヴィン・クイーン(ドラムス)らとのクインテット版が挙げられる。