「Inchworm」は1952年、フランク・レッサーが映画『Hans Christian Andersen(アンデルセン物語)』のために作詞・作曲した楽曲である。映画ではダニー・ケイが歌い、子供たちの合唱による算数の掛け合い(「2+2は4…」)が対位法的に重ねられるユニークな構成で親しまれた。
メロディは穏やかなワルツ調で、シンプルな3拍子の中に哀愁と温かみが同居する。コード進行はダイアトニックを基調としつつ、一部にクロマティックな動きを含み、童謡的な素朴さの中にも洗練されたハーモニーが潜む。ジャズの文脈では、コルトレーン・カルテットがレパートリーとして繰り返し取り上げたことでスタンダードとしての地位を確立した。モーダルなアプローチやフリーな展開を加えることで、原曲の子守歌的な性格が深い精神性を帯びて変容する。
ジャズにおける代表的な録音はジョン・コルトレーンのアルバムColtrane(1962年)に収録されたインストゥルメンタル・バージョンで、マッコイ・タイナー、ジミー・ギャリソン、エルヴィン・ジョーンズとの演奏は瞑想的な深みを持つ。パトリシア・バーバーのヴォーカル版も現代ジャズの文脈で高い評価を受けている。