「Ill Wind (You're Blowin' Me No Good)」は1934年、ハロルド・アーレンが作曲し、テッド・ケーラーが作詞した楽曲である。コットン・クラブ・パレード第24版のために書かれ、アデレード・ホールが初演を飾った。アーレンとケーラーのコンビによるコットン・クラブ最後のショーを彩った一曲でもある。
キーはAbメジャーが一般的で、32小節のAABA形式をとる。メロディはブルージーな半音階的動きを多く含み、アーレンならではの憂いを帯びた旋律美が際立つ。A セクションではマイナー・コードへの傾斜とメジャーへの解決が交互に現れ、ブリッジではさらに調性が揺らぐことで、曲名通りの「不吉な風」の雰囲気を音楽的に描き出している。テンポはスロー〜ミディアムで演奏されることが多く、ヴォーカリストにとってはドラマティックな表現力が求められるナンバーである。
代表的な録音として、アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズが1956年のアルバムThe Jazz Messengersで披露したハードバップ・アレンジが名高い。リー・モーガンのアルバムCornbread(1967年)でのセクステット演奏も力強い。ヴォーカルではエラ・フィッツジェラルドのElla Fitzgerald Sings the Harold Arlen Songbookが決定的な名唱として知られる。