「I'll Take Romance」は1937年、作曲家ベン・オークランドが映画『I'll Take Romance』のために書いた楽曲である。作詞はオスカー・ハマースタイン2世。映画ではソプラノ歌手グレイス・ムーアが歌い、ロマンティックなバラードとして広く知られるようになった。
形式は32小節のAABA。キーはFメジャーが一般的で、ゆったりとしたテンポで演奏されることが多い。A セクションのメロディは緩やかな跳躍を含みながら自然に歌い上げる構成で、ブリッジではサブドミナント方向へ転調し、穏やかな色彩の変化を生む。コード進行はスタンダードなii-V-Iを基調としつつも、経過的な半音進行が随所に織り込まれ、ハーモニーに洗練された陰影を与えている。バラードとしての美しさに加え、即興演奏の素材としても豊かな可能性を持つ一曲である。
ジャズの録音としては、マッコイ・タイナーのピアノ・トリオによる演奏が知られるほか、マックス・ローチやバド・シャンクのアルバムI'll Take Romanceでのストリングスを伴った演奏も味わい深い。ヴォーカルではジューン・クリスティがアルバムSomething Coolで披露したバージョンが人気を博した。