「I Don't Stand a Ghost of a Chance with You」は、1932年にヴィクター・ヤングが作曲し、ネッド・ワシントンとビング・クロスビーが作詞した楽曲である。ヤングは映画音楽の巨匠として知られ、「Stella by Starlight」「My Foolish Heart」「When I Fall in Love」など、数多くのスタンダードを残した作曲家である。
32小節AABA形式で、一般的なキーはBbメジャー。叶わぬ恋の切なさを表現したメロディは、大きな跳躍と半音階的な動きが特徴で、バラード演奏に最適な素材となっている。コード進行は比較的シンプルだが、ブリッジの転調が美しいコントラストを生み出し、演奏者の表現力が試される一曲である。特にルバート奏法での解釈が映える楽曲だ。
最も決定的な録音はクリフォード・ブラウンがアルバムBrown and Roach Incorporated(1954年)に収録した無伴奏カデンツァ付きの名演である。またソニー・ロリンズの無伴奏サックス・ソロ版も、この曲の可能性を極限まで引き出した伝説的パフォーマンスとして名高い。