「ヒアーズ・ザット・レイニー・デイ」は、ジミー・ヴァン・ヒューゼン(作曲)とジョニー・バーク(作詞)が1953年のブロードウェイ・ミュージカル『カーニバル・イン・フランダース』のために書いたバラードである。公演はわずか6回で終わったが、この曲だけが生き残り、ジャズ・スタンダードの名作となった。
形式は32小節のABAC。原調はFメジャーだが、ジャズではGメジャーで演奏されることが多い。冒頭のトニックから2小節目で♭VI方向へ大胆に逸脱する和声進行が印象的で、失われた愛への戸惑いを音楽的に描き出す。バスラインが4度圏を巡るように動き、方向感の揺らぎが曲全体に独特の叙情性を与えている。Cセクションの終結部ではAとBの要素が巧みに統合され、美しいデヌーマンを形成する。テンポは遅めのバラードが定番で、ボサノヴァ・アレンジでも演奏される。
フランク・シナトラの1959年録音(アルバムNo One Cares)は、番組ホストジョニー・カーソンが「最も好きな曲」と公言した決定的名演。ピアノ・トリオではビル・エヴァンスの繊細な解釈が名高い。