「イパネマの娘」は、ブラジルの作曲家アントニオ・カルロス・ジョビンが1962年に作曲し、ヴィニシウス・ヂ・モライスがポルトガル語の歌詞を付けたボサノヴァの代表曲である。リオデジャネイロのイパネマ海岸近くのバー・ヴェローゾを通り過ぎる少女ヘロイーザ・ピニェイロに着想を得て書かれた。英語詞はノーマン・ギンベルによる。
楽曲はAABA形式の32小節で構成されるが、ブリッジが通常の8小節ではなく16小節と倍の長さを持つ点が特徴的である。キーはD♭メジャー(Getz/Gilberto版)またはFメジャー(リアルブック版)で演奏されることが多い。Aセクションはii-V-Iを基調としたゆったりとした進行だが、メロディが9thや13thを強調することで浮遊感のある響きを生む。ブリッジでは半音上のキーへ転調し、巧みな和声移動を経てトニックへ回帰する構成が、ジョビンの洗練された作曲技法を示している。
1963年録音のアルバムGetz/Gilbertoにおけるスタン・ゲッツとアストラッド・ジルベルトの共演版が世界的大ヒットとなり、1965年グラミー賞最優秀レコード賞を受賞した。フランク・シナトラとジョビンの共演盤Francis Albert Sinatra & Antônio Carlos Jobim(1967年)での格調高い演奏も名高い。