「フォー・オール・ウィー・ノウ」は、J・フレッド・クーツが作曲、サム・M・ルイスが作詞し、1934年に発表された。「アイルランドのナイチンゲール」と呼ばれた歌手モートン・ダウニーが自身のラジオ番組で初めて歌い、ハル・ケンプ楽団とイシャム・ジョーンズ楽団の録音がチャートで成功を収めた。なお、1970年の映画Lovers and Other Strangersのオスカー受賞曲とは同名異曲である。
楽曲は32小節のバラード形式で、「いつまた会えるかわからない」という切ない歌詞にふさわしい、抒情的で感情豊かなメロディを持つ。ハーモニーはロマンティックなコード進行を基調に、セカンダリー・ドミナントやディミニッシュ・コードが織り込まれ、深い感情的色彩を生み出している。スロー・バラードとして演奏されることが多く、メロディの歌い回しやダイナミクスの表現力が問われる楽曲である。
ジャズにおける最も感動的な録音の一つが、1958年のビリー・ホリデイによるアルバムLady in Satin収録のバージョンで、レイ・エリス楽団の弦楽伴奏と晩年のホリデイの痛切な歌唱が胸を打つ。ナット・キング・コールの1949年の温かみある録音や、1972年のダニー・ハサウェイによるソウルフルなカバー(ロバータ・フラックとの共演盤収録)も名演として高く評価されている。