「フライ・ミー・トゥー・ザ・ムーン」は、バート・ハワードが作詞・作曲し、1954年に発表されたキャバレー・バラードで、当初は「In Other Words」というタイトルだった。ケイ・バラードがDecca Recordsから最初の録音をリリースし、その後多くの歌手に取り上げられた。1963年にペギー・リーの提案で現在のタイトルに改められた。
楽曲はCメジャーを標準キーとする32小節の形式で、オリジナルは3/4拍子のワルツとして書かれた。コード進行は五度圏に沿った美しいサイクル(Am7-Dm7-G7-Cmaj7-Fmaj7-Bm7♭5-E7-Am7)で、ジャズ・ハーモニーの教科書的な進行として広く知られる。メロディは歌いやすく親しみやすいが、ハーモニーの洗練度が高く、即興演奏やリハーモナイゼーションの素材としても優れている。多くのテンポや拍子で演奏可能な柔軟性を持つ。
決定的な録音は、1964年のフランク・シナトラによるアルバムIt Might as Well Be Swing収録のバージョンで、クインシー・ジョーンズ編曲、カウント・ベイシー楽団の伴奏による4/4スウィングへの変換が画期的であった。この録音はアポロ10号・11号の月面ミッションでも再生された。アストラッド・ジルベルトの1965年のボサノヴァ・バージョンや、ダイアナ・クラールの2002年パリ・ライブも名演として知られる。