「ディア・オールド・ストックホルム」は、スウェーデンの民謡Ack Värmeland, du sköna(麗しのワームランド)をジャズに翻案したスタンダードである。1951年にテナーサックス奏者スタン・ゲッツがスウェーデン・ツアー中にこの旋律をジャズ化し、以後ジャズ・レパートリーとして定着した。
楽曲はAABA'形式だが、各セクションの小節数が不均等で独特の構造を持つ。Aセクションは8小節のメロディに4小節のヴァンプが続く12小節、Bセクションは4小節、A'は短縮された形で終結し、フォーム全体の把握が演奏上の最大の課題となる。キーはDマイナーが一般的で、Aセクションはマイナー・キー、Bセクションは平行メジャーへ転じる。ハーモニーはほぼダイアトニックだが、マイルス・デイヴィスのアレンジではAセクションにリズミックなヴァンプが加えられ、フォーム末尾にはsus系コードのペダルが置かれるなど、シンプルな民謡素材に洗練されたジャズの仕掛けが施されている。
最も有名な録音はマイルス・デイヴィスの1956年のアルバム'Round About Midnightに収録されたヴァージョンで、ジョン・コルトレーンがメロディに対旋律を奏でる名演として知られる。メンバーはレッド・ガーランド(p)、ポール・チェンバース(b)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)。ゲッツの1951年のスウェーデン・オールスターズとのオリジナル録音も、原曲の叙情性を活かした必聴盤である。